小草平 植物観察 日記 3月 3月の小草平は眠りのとき。ただ茶色ずくめの世界があるのみで、花がないことを確かめました。しかし、柵内はたっぷりある腐葉土の中で、眠りの時期が終わりを告げる予感がありました。
4月 4月は芽吹きのとき。柵内はいたるところ土が露出していましたが、花や葉っぱにも出会えました。フキノトウ・タチツボスミレ・エイザンスミレ・ミドリハコベ・キジムシロ・セトガヤの6種で、小さくて愛らしい花をつけていました。これらの横に番号をつけた割り箸を立てて目印としました。 下山後県立秦野ビジターセンターの図鑑と専門家のアドバイスを頂き、植物の名前の確認をしました。 これらの小さな植物は、秋まで続く調査の大変さや不安を取り除いてくれるような、勇気を私たちに与えてくれました。帰りの下山道での足は地面をしっかり踏んでいましたが、心はスキップしていました。
5月 5月になると多くの花が咲いて植物が急に育ち始め、柵の中の様子が一変していることにすぐ気がつきました。4月に立てた目印も隠れてしまいました。神奈川県自然環境保全センターの皆様にアドバイスを頂き、柵内に3カ所のコドラート(1m四方)を設けました。 よく見ると多くの植物は葉を出し、つぼみをつけているハルジオン・オニタビラコ・ミツバツチグリ・スズメノヤリ・ヨモギなどにも出会いました。その中でも圧倒的に王者を誇っていたのは、一面に黄色の花を咲かせたセイヨウタンポポでした。 花のない葉だけのものが多く、ビジターセンターでの名前調べに時間がかかりました。
6月 6月は小さな花も咲き、夏に花を咲かせるオカトラノオ・アカショウマなどはつぼみを持っていました。県花でもあり、保護柵の中の女王ヤマユリがつぼみを持ち大きな葉も増えてきていました。このころ、気持ちいいくらい林床が青々としてきました。 3カ所のコドラートの位置を、日照量が異なるよう修正しました。 柵内の大きなユモトマユミとサンショウがブナに陰をつくることから移植や枝払いが話題になりました。しかしのちにここは国定公園で枝一本切ってはいけないこと、またブナは陰樹で他の木の陰になってもやがてそれを追い越し大きくなることを知りました。ブナ同士も競争し自然淘汰されてこの場に適正な数になると聞き長い年数をかけて森や林が変化していく様に思いを馳せました.。
7月 柵の中はジャングルのようでした。 柵の入り口から数歩入ったとき、足下に何かが。かなり大きなへびです。斜面をスルスルと下っていきました。 柵付近のイタドリの先がプツンと切られているのが目につきました。傍らの柵の針金が押し広げられている様子からシカが頭を入れて食べたのではと思いました。 柵内で観察をしていると、会員や一般の方が声をかけてくれました。
8月 8月は大きなユモトマユミやサンショウの木々が葉を広げ、柵内では日当たりの差ができてきました。しかし、日当たりは関係なしとばかり柵内は花の饗宴。ダイコンソウの花・ヤマユリやウバユリなど背の高い花が咲き、秋の気配を感じさせるタイアザミ・ゲンノショウコ・ノコンギクなどがつぼみを持っていました。
9月 イタドリなど調査中の植物が食べられてしまいました。柵内に大量のシカの糞を見つけました。保護柵の北側が一部倒れていましたので、ここからシカが侵入したことがわかりました。特に、イタドリはたくさんあった葉をほとんど食べつくされてしまい、茎だけ残っている状態でした。花が咲いているのではと楽しみにしていたのですが、観察できませんでした。 柵内はすっかり秋の気配。枯れた草も目につきました。 調査後、柵を補修して下山しました10月植物たちは早々と花の時期を終わらせ、ヤマトリカブトが最後を飾りました。
12月 久しぶりの小草平はすっかり冬支度をしておりました。 目覚めを待つ小草平芽吹きと共に早くも咲いた花々急に育ち始めた植物たち青々とした林床とヤマユリのつぼみ木陰にも花々の饗宴シカの糞と倒された保護柵秋の気配。コドラートにも植物の虜となった面々今年記録した植物は約60種になりました。 そのほとんどが多年草でしたので、地上部分が枯れても来年の春になると新しい葉や茎が出てきます。 再会を楽しみに春を待ちます。 |