|
日本二百名山の白石山(はくせきさん)を目当てに、笠取山から飛龍山を縦走する計画を立てた。この山は埼玉県側からは白石山と呼ばれるが、現在の主な登山口のある山梨県側では和名倉山と呼ばれている。
天候は曇りがちで、初日は日中に小雪が舞って寒く、二・三日目は風が強く今一つだったが、高山植物も少しあり、周りの山の展望、温泉と満足できる楽しい山行となった。
初日は塩山駅からタクシーで登山口の中島川橋に着き、「源流のみち」を通って、多摩川源流の近くまで登り、笠取山を往復する。その後は東に縦走して将監小屋に下る。10時過ぎに出発し、山ノ神土で道を間違えたため、17時前の到着だ。小屋には薪ストーブがあるが部屋は他に登山者が一名だけで空いていて寒い。
二日目は白石山までの往復だ。何箇所か雪が残っているがアイゼンを使うほどではない。ルートはあまりアップダウンがなく、テープを頼りに歩けば道に迷うことはない。途中で富士山が臨まれ、展望も良い。
白石山の頂上は樹林帯の中で展望はない。標識は和名倉山となっている。6時に出発して10時の到着だ。山頂と途中の展望箇所での昼食でゆっくりして、将監小屋には14時前に戻ってくる。
三日目は朝食を4時にお願いし4時45分に出発する。尾根を通らずトラバース状に進み飛龍山南の分岐に着く。山頂を往復してから下山し、正午前に丹波山温泉に着く。
温泉入浴後は、食堂での昼食と反省となる。
|
|
~ 山 行 記(その2)~ |
日本ニ百名山の和名倉山(白石山)をメインとして、笠取山から飛龍山を縦走してきました。まずまずの天候で、充実した山行となりました。
(初日:4月29日(金))
普通列車を乗り継いで、塩山駅に8:45に到着する。予約しておいたジャンボタクシーで登山口の中島川橋の登山口に向かい、計画どおり9:50に到着する。ストレッチをしてから出発する。
歩き始めると、傾斜が緩やかで幅が広く、落ち葉があって足に優しく歩きやすい道だ。この先ずっと登山道脇に平成22年とナンバーの書かれた真新しい鳥の巣箱が随所に設置してある。登山口にはこの中に蜂が巣を作っているおそれがあるので注意するようにと書かれている。
馬止まで行くと道が3つに分かれる。真っ直ぐの道は登山道ではなく巡視道と書かれていて、笠取山方面は左手奥の登りの道を行く。その左のやや下り気味のトラバース道は一休坂方面へのルートだ。
その先からは少し傾斜が増すが、相変わらず幅が広く歩きやすい道だ。途中で小休止の後、計画どおり11:30に黒槐分岐に到着する。広い場所でベンチが2つある。槐(えんじゅ)というのは難しい漢字だが、マメ科の落葉高木だそうだ。この分岐は黒槐山から伸びる黒槐尾根の先端に当たる場所なので名付けられたようだ。
昼食を取ってから出発する。相変わらず良い道が続き、シラベ尾根分岐を経て、水干分岐に来ると、唐松尾山方面へのルートは狭い道だ。左手の水干(みずひ)に向かう道が広くメインのようだ。水干には行かなかったが、多摩川の源流地点だそうで、この辺り一帯は、東京都水道局により、「源流のみち」と名付けられているようだ。
(源流のみち … http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/water/pp/hureai/mizuhi.html)
すぐに笠取山に至る分岐に着く。サブザックを出して、荷物をデポしてから山頂に向かう。途中の急斜面では雪が凍結している所もあり結構険しいが、荷物が軽いのでスムースに登り進む。山頂に着くと狭い。曇ってきて遠くが霞んでいるが、東南東方面に少し格好の良い山が見える。初めは雲取山かと思われたが、地図を見ると翌々日登る飛龍山のようだ。西には甲武信岳らしい山が見える。この山は双耳峰になっていて、三角点は最高峰の東峰にあるが、山梨百名山の標識は西峰にあるそうだ。東峰で満足して、記念撮影の後に下山する。
分岐に戻ってから歩き始めると幅の狭いトラバース道となる。鞍部を過ぎると黒槐山への急登となる。ゆっくり登って行く。振り返ると笠取山の2つのピークが下に見える。黒槐山は2,024mあり、笠取山よりも71メートル高いが登山道は南西側の標高2,000m付近を巻いて通る。この頃からチラチラと小雪が降り始める。気温が低いのだ。樹林帯の中の日当たりの悪い所では雪が解けて凍結した所もあるがアイゼンを出すほどではない。
しばらく行くと前方に道の付いた三角のピークが見える。その手前左にも山が見える。唐松尾山はどちらかなあと思いつつ歩いていく。途中で休憩を取ってから登り進むと唐松尾山の頂上に着く。やはり近い方だった。あまり展望がなく、標識は登山者が付けた簡単なものしかない。
そこからは下りとなる。16時過ぎには小屋に着くかなあと思いながら下っていくと、山ノ神土に出る。広くなった場所で北東は和名倉山方面へのルートだ。その右の道には「飛龍山・雲取山方面」という文字が見えるので、つい違うと思い、もう1つの広い道を進む。これがとんでもない間違いだった!真新しい白木の標識で文字が白いのでよく見えなかったということもあったが…。
下っていくと防砂堤のある沢に出る。対岸に登山道が見えるので渡るようだが、沢に降りる道が崩れている。慎重に降りて行き、対岸でも崩れた所を慎重に登る。さらに行くと小さい沢を渡り、もう少し行くとまた防砂堤のある沢に出る。これを渡ろうとしていると、後ろからもう小屋についても良い時間なのにおかしいと声が掛かり、地図を眺めてみて道を間違えたと分かる。黒槐分岐に至るトラバースのルートを来てしまったようだ。
引き返して山ノ神土まで戻ると、標識の「飛龍山・雲取山方面」の文字の上に「将監峠」と書かれている。これで50分ほどロスしてしまった。小生としては他のメンバーの皆さんに誤ることしきり。非常に申し訳なかった。
山ノ神土からは三ノ瀬分岐を経て15分ほどで将監峠に着く。ここからも右にも道があるが、テント場の見える斜面をストレートに下っていく。右の道は合流せず、そのまま三ノ瀬方面に下るようだ。
将監小屋に着くと、管理人さんも到着が遅いので心配されていたようだ。受付を済ませ、夕食を17時半にしていただくことにして、部屋に入る。先着の単独行の男性が1名いるだけで、広い部屋にゆったりと泊まれるようだ。夕食までに少しだけウイスキーのお湯割りをいただく。
夕食は炊き込みご飯だ。おかわりはなしだが、初めから大目によそってある。まずまずの内容だ。
部屋に戻ってから少し歓談する。外の水場に行くと、カップが凍っている。気温は零下のようだ。宿泊室の入口に薪ストーブがあるが、部屋の中は寒い。天井が高く広い部屋に8人だけなので余計に寒い。
20時前にはみんな就寝とする。
真夜中0時過ぎに目が覚めて外のトイレに行く。空は満天の星空だ。しかし、布団に戻ると寒い。フリース、ダウンの長袖、ヤッケ重ねて着ているのだが…。
(2日め:4月30日(土))
前日管理人さんとお話しした際、7時出発を考えているとお話ししたところ、もっと早く出た方が良いとアドバイスを受け、朝食は5時で6時出発ということになった。このため、4時に目覚ましが鳴って目が覚める。真っ暗だし寒いのでトイレに行って戻ってから、しばらく布団の中に留まる。
5時過ぎに食堂につながる通路の戸の鍵が開けられ、朝食ができたと管理人さんから声が掛かる。生卵、魚の甘露煮、海苔、漬物、味噌汁と簡単だがまずまずの朝食だ。小屋まで軽トラックが登ってくることができるらしく、新鮮な食材調達ができるようだ。
準備をしてストレッチの後、ちょうど6時に出発する。初めの将監峠までの斜面の登りがきついので、ゆっくり登る。30分ほどで山ノ神土に着き、休憩をとる。
和名倉山方面への道は少し荒れているが、登山道としては問題ない。トラバース状に進みしばらくすると水場の小沢を渡る。山ノ神土から約1kmの鞍部の所で展望が開ける。飛龍山の右に薄らと富士山が見える。その先で小ピークの北側を進むが、結構雪が付いている。トレースの足形にしたがって歩く。続いてリンノ峰の手前の鞍部に出るとまた展望がある。リンノ峰の北西側をトラバースして進み、西仙波へ登る。
西仙波はピークらしくないが、岩が土手のようになっていて、休憩には良い場所だ。西仙波の先の辺りからは展望が開けてくる。東仙波も迫ってくる。
東仙波に登ってまた休憩する。ここからはルートの進行方向は北向きに変わる。北側は急斜面になっていて、雪がたくさん付いている。解けて凍っている所もある。トレースを頼りに下る。
下り終わると幅の広いダケカンバの林の中を通る道となる。吹上ノ頭を越えると展望が良いが、地図に「南アルプスの眺めがよい」と書かれているものの南アルプスは見えない。ルートは多少のアップダウンはあるがそれほどきつくないので歩くのは比較的楽だ。
八百平の南部付近で休憩を取って先に行くと道に迷いそうな所が多くなるが、所々にテープがあるので、これを頼りに進んで行く。川又分岐付近で小鹿と出会う。その先で和名倉山から戻ってくる登山者に山小屋の犬が一緒にやって来る。我々の方が人数が多いせいか、その後は我々と一緒に歩いて行く。
二瀬分岐からはルートが西向きになる。ここは標識やテープがないと道が分からない場所だ。例の犬は何度もこの辺りに来ているらしく、先に行って待っている。まるで道案内のようだ。テープを見ながら進んで行き、途中から進行方向を北東に変えて樹林帯の中を進んで行くと和名倉山の頂上に到着する。
この山は武蔵の国(埼玉県)側からは白石山(はくせきさん)と呼ばれ、甲斐の国(山梨県)側からは和名倉山と呼ばれているそうだ。日本二百名山としては、白石山の名前で登録されている。和名倉山とは別の山と誤解している人もいるらしい。
まだ10時なので時間がたっぷりあるので、ゆっくりすることにする。食べ物を出すと一緒に来た犬が欲しがる。おとなしい犬だがさすがにお腹が空いているようなので甘えた声で寄って来る。少しずつ食べ物をやると喜んで食べる。喉も乾いているだろうと思い水をやると300mlくらい飲む。後からやって来た若い単独男性の話をお聞きすると、この犬は将監小屋で飼われているのではなく、三ノ瀬にある民宿の犬だそうだ。民宿の方から連れて帰ってほしいと頼まれたそうだ。細引きを首輪に繋いで帰ることになる。
我々は先に出発して元来た道を帰って行く。二瀬分岐の少し南で単独男性と犬が追い越して行く。犬はおとなしく連れて行かれている。紐に繋がれて散歩に連れて行かれるのに慣れているのだろう。
八百平の少し南にある展望の良い所で昼食とする。この頃から次第に風が強くなってくる。天候は下り坂のようで、雲が濃くなり遠望が霞んでくる。東仙波は風が強いので休憩を止めて先に進む。西仙波も風があるが、ここで休憩をとる。
途中の雪がある個所は、朝よりも気温が上がっているためか、雪が柔らかくなっている。順調に歩いて、13時半に前日と合わせ4回目の山ノ神土到着となる。(本来は3回のはずだったのだが・・・。)結局14時前に将監小屋に到着する。
時間があるので念入りにストレッチをしてから、小屋の中でワインや日本酒などとおつまみでゆっくり2時間半くらい歓談する。前日と同様に我々以外には単独男性1名(前日とは別の人)だけで空いている。また、この日は前日とは異なり、それほど寒くない。
夕食は17時からで、この日のメニューはカレーライスだ。翌朝は朝食を4時にお願いしたので荷物の準備をしてから19時過ぎには就寝とする。
(3日め:5月1日(日))
3時半頃に起床とし、出発の準備をして先にストレッチを済ませてから、4時過ぎの朝食をいただく。そして計画の4時半より少し遅い4:45に出発する。朝から曇っていて風もある。下山まで雨に遭わなければ良いがと思う。下山後に温泉入浴と昼食を計画しているので早い出発にしたのだが、雨に遭わないようにということからも予定どおり早い出発としたのだ。
将監峠には登らず東北東に登り、飛龍山に向かう登山道に合流する。登山道は尾根を通らずトラバース状に付けられている。尾根には竜喰山(2,011.8m)と大常木山(1,962m)という山があるようだが、ルートはないようだ。
登山道は単調に長く続く。1,847mの小ピークを越えて少し広い所に出ると、飛龍山の山容が迫ってきて、緩やかな登りとなる。ただ、山頂には向かわず尾根に沿って南に登って行く。登山道に一旦融けて凍結した雪が残っている。もうすぐ着くかなと思ってからが長い。やっとという感じで飛龍山分岐に着く。
荷物をデポしてサブザックで山頂に向かう。狭い道で樹林帯の中を細かくジグザグ進んで行く。所々に凍結した雪が残っている。25分で山梨百名山の標識のある標高2,077mの頂上に到着する。樹林に囲まれていて展望はない。三角点は100mほど東にあり標高2,069.1mのようだが、そちらには行かないことにする。この山も呼び名が2つあり、甲斐の国側からは飛龍山と呼ばれているが、武蔵の国側からは大洞山(だいどうさん)と呼ばれているようだ。記念撮影をしてから分岐まで戻る。
お目当てのピークにはもう登ったので、ここからはもう下るだけだ。少し下って登り返すと前飛龍のピークだ。ここも展望がない。朝食が早く下山後に昼食なので、ここで軽く行動食をとる。
前飛龍からの下りは急だ。登る人は大変だろうと思う。しかし、しばらくすると幅の広い緩やかな道となる。この頃から風が強くなってくる。雨が降ってこなければ良いがと思って進んでいると、ポツリと雨が降ってくる。雨具を着るほどではない。
風が強いので熊倉山の手前で休憩をとる。地図には火打岩と書かれているが大きな岩は見当たらない。その先も幅の広い緩やかな道が続く。そうしていると雨は降らなくなってくる。
サオラ峠は休憩を取らずに丹波(たば)への下り道に進む。ジグザグで幅の狭い道だ。南に向かうトラバース道になると所々崩れた所を慎重に歩く。途中でトウゴクミツバツツジがとてもきれいに咲いている。
さらに下るとたくさんの落ち葉に覆われたジグザグ道の下りとなる。落ち葉が膝まで達するくらいの深い積り具合だ。こういう道は初めてだ。落ち葉の下の状況が分からないので慎重に歩く。しばらく下るとやっと深い落ち葉がなくなる。道が南西から南東に方向を変える所で道が広くなり、小休止をとる。広い道を下って行くと集落がすぐ近くに見えてくる。目隠しのためか登山道脇に古タイヤを並べた所を通過すると畑の間の道となり、いくつか柵を越える。
舗装された道に出て降りて行くと国道411号線に出る。ここから丹波山温泉までは少し歩く。丹波バス停で時刻表を見ると2時間以上先の我々が乗る予定のバスまでない。10分ほどで道の駅たばやまに着き、川に降りて橋を渡ると丹波山温泉「のめこい湯」だ。ここまで雨に遭わずに済んだ。
温泉はつるつるするお湯で気持ちが良い。「のめこい」というのはこの辺りの方言でツルツル、スベスベという褒め言葉だそうだ。
入浴後は施設内の食事処でビール乾杯と昼食とする。やはり下山後の温泉とビールは良いものだ。
その後は道の駅の売店でお土産を買って、予定どおり14:23発のバスで帰路につく。
今回小生は1月末以来の久しぶりの山行だったので疲れたが満足のいく山行となる。
|
|