日本横断に参加している小生にとって分水嶺山行はちょいと気になる存在だった。今回初めてこの山行に参加した。
ルートは瑞牆山荘から出発し、金峰山への道を大日小屋で別れて北上し、小川山から今度はひたすら西に向かう。ちょうど瑞牆山の周りをコの字に歩き、最終的には野辺山まで延々と歩くのである。
初日大日小屋泊。翌日小川山を経てルートのない県界尾根を西に向かう。山梨百名山とはいえ小川山はマイナーな山なのであろう、山頂までに2人の登山者しか会わなかった。周辺には瑞牆、金峰、甲武信などロマンあふれる山がひしめいているのに小川山はなんと凡庸な名前なのであろうか。不遇の山―そんな山だった。
たいした藪ではないと言うものの、藪こぎはホコリっぽくて、枯葉や木の枝などのゴミが体にまとわりついてうるさい。裏山の藪を駆けまわり、汚れたまま家に上り込んでは親に叱られた子供の頃を思い出した。「汚れても構わない格好をするんだった」などと反省していると、「ルートを外れているぞ!右に進路を変えて!よしよしルートに乗った」とGPS片手のメンバーの声が飛ぶ。そう、分水嶺山行はハイテクなのである。
幕営予定地の萱ダワには予定より早く着いた。周囲を観察すると驚いたことに近くに鉄の檻(罠)が仕掛けられているではないか。猪用?それとも熊用? 大きなけもの用の罠であることは間違いない。鉄柵の扉がギロチンのように大きく口を開けて獲物を待ち受けている。ところがメンバーはなぜかそのことには無関心である。熊にとって檻の餌より、テントの中の餌のほうが美味いにきまっている。口には出さなかったが、もう少し先で幕営することに決まった時には内心ほっとした。
一時間ほど歩き、幕営適地を見つけた。水をどうやって確保するのかと見ていると、地形図を見ながら経験則かカンなのか山梨側の谷へ下る。50mも下らないうちに山肌に湧水を発見した。分水嶺はGPSというハイテクと山カンの絶妙なる組み合わせなのである。
三日目は雨である。前日距離を稼せいでおいたおかげもあり、雨の中、20kmを快調に飛ばし3泊4日の予定を2泊3日で完全踏破した。「分水嶺恐るべし」である。
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