出合を出発。まずまずの天候で時折、晴れ間ものぞく。3年連続の一ノ倉ではあるが覆い被さるような圧倒的重量感はいつもながら凄まじい。雪渓は例年より後退している。テールリッジに取り付いた時点で息子より若そうなグループに次々に追い抜かれる。そうか、ここは若者の世界なのだ。
まずは二朗氏のリードで「つるべ」が始まる。快調な出足である。2P、凹角から稜線へ、3Pはフェース、ぐんぐん高度が上がり足元の一ノ倉沢が美しい。南稜テラスが順番待ちで賑わっているのがよく見える。南稜フランケ、中央カンテ、凹状ルートにも数パーティが入っている。そしてしばしば聞こえる炸裂音、誰が落とすのか「ラクー」の大声に頭の下げる人の波に、いつものことながら足がすくむ。
核心部をAOで抜けほっとしたのもつかの間、ぱらぱらと雨が降り出し次第に強くなる。たまらずピナクル脇で雨具を着用し登攀を続ける。解説書に「ホールド、スタンスともに良く爽快で楽しい」とあるが岩は濡れてよくすべる。腕力だけで終了点である衝立ノ頭へ。遠望は利かずに雨に追い立てられるようにピークを後にしたがそれでもうれしさがこみ上げる。数ピッチの懸垂でハクサンコザクラを愛で、略奪点で雪渓を渡り、衝立前沢から帰途へ。曇天にサンカヨウがよく映えていた。
一昨年の国境稜線への縦走も素晴らしかったが今年の北稜下降もアルパイン気分を満喫、改めて谷川のスケールと多様性を実感した。 |
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