傘寿なれど「みろく」を開くときは心がはずむ。Sランク以外には目もくれない。
「みろく」人と称して日向山を知らぬ御仁はいるまい。「みろく」人がこの山の花を語る時は目の色が変わる。この山の主「カタクリ」は人間はおろか仲間の花どもにも媚びる事を拒む。
今年も彼女は赤紫の花びらを毅然として宙に掲げ他に類を見ない顕示性を惜しみなく躍動させて私たちを歓迎してくれた。ひとり超然一輪のみ花びらを宙に反り返らせて己の理想を高らかに叫ぶ。潔癖な彼女は二枚の葉をまとうのみ。群居を好まず一株ずつ孤高を持する。
最近同じ石灰質を好んでか白色の花が脇役をつとめ始めた。アズマイチゲが遠慮がちに白い花をカタクリの赤紫にそわせる様子が目立ち始めた。
日向山は階段の山でもある。中年の外人さんが嘆いた。
ニホンジンハアシガミジカイノニドウシテカイダンヲタカクスルノデスカ。
私はストックを超長く超短く忙がわしくも歯を食いしばった。
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