昨夜のブリーフィングで「明日は確実に降りられるように時間通りに出発しよう」と声を掛けておいたのが効いた様だ。予定時刻より15分早い4:30に起床。シラスや昆布など、トッピング一杯のふぐ茶漬け。今朝は、MrKも食欲があるようで一安心。 6:30にはストレッチが終わっていたのだが、恒例の待ったがかかり、6:42に出発。この程度は想定内。日本海側は雪が降っているようだが、関東は晴れの予想。分水嶺がどちらに転ぶかは時の運。大抵は悪いほうに転ぶのだが、今日は関東圏の晴天域に入ったようだ。前回に引き続き、天気に恵まれてありがたいことだ。
TkR,UcDとピッチごとにトップを交替して進んでいく。
9:30−40 1266につながる尾根の方に出る。3つある中三依へのエスケープルートの最初のポイント。関東ぐるりの上野さんが使ったと思われる尾根だ。尾根上に踏み跡が続いているようには見えなかった。KwSがトップに立ち、西の尾根に下る。降り口に古い標札が掛けられていたが、何と書かれているのかは判読できなかった。正面には荒海山が見える。左に続くゴジラの背の様な尾根が前回我々が歩いたルートだ。我ながら良く歩いたものだと思う。荒海山の頂上もだいぶくっきりと見えてきた。頂上直下の急坂。雪がほとんど付いておらず、東壁とでも呼ぶべき岩の斜面だ。今日、登るのは到底不可能。次に来るとしても、それなりりクライミングの装備を持ってこなければならないだろう。登りたいという気持ちとともに、ここまで来て正面から東壁を見て、ある種の満足も感じられた。もう、この山域では十分に楽しんだ。今日は、福島側に降りて、前回の下山路と合流すれば、歩いたルートとしてはつながることになる。心の中で妥協が成立した。
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荒海山と前回歩いた尾根
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1276から荒海山東壁を望む
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10:44−58 1276のピークで休憩。荒海山を仰ぎ見る。実に美しい山だ。この方向から、荒海山を見れたこと。それだけでも、3日間かけてここまで来た価値があった。ここから分水嶺を離れて北西の尾根を下る。ここは、「鳥ヶ森の住人」さんが開拓したルートだ。最初は、尾根がつかみにくいが傾斜はゆるく順調に下る。1170mまで降りたところで、先頭のYbTが行き詰る。様子を見に行くと崖になっていて先が見えない。30mロープでありられるかどうかも怪しい状況だ。KsMは、上のほうに尾根があった、という。このあたりは、尾根が複雑で、ここも一旦二つに分かれた尾根がひとつに合流する地形になっている。今、来ているのは右の尾根。無理をして下るよりも、もうひとつの尾根を偵察した方がよさそうだ。40mほど登り返して左の尾根に入る。地形図で見るよりも明瞭な尾根で尾根に沿って下っていったら主尾根に合流した。地図では読み取れないような痩せ尾根や急坂が出てくる。ところどころに厳しい藪も出てきてハードな道だ。
12:40 1110mで先頭のTkRが行き詰る。木に掴まれば何とか下りられそう、との意見も出るが足下が見えない状況なのでロープを出して懸垂下降をすることにする。途中でバランスを崩したりしながら、なんとかロープいっぱい使って安定した場所まで降りる。左側を見ると垂直の岩壁になっている。とてもロープ無しでは降りられないところだった。場所が狭いので10mロープを補助的に張って安全な場所まで移動する。最後はUcDが手際よくロープを回収し、首にロープを掛けて降りてくる。なかなかキマッテいる。
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核心部では写真を撮る余裕が無かった
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まっすぐ行けばこの崖
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13:40 ロープを受け取って先に進む。1070mまで降りると、再び行き詰まる。主尾根を下るのは厳しそうだ。左の支尾根に入り、主尾根に回りこむチャンスをうかがう。しばらく行くと、主尾根が見通せる場所に出た。先のほうにはピンクテープが巻かれた木が何本か見える。やや傾斜がきついが、立ち木を支点にしながら、主尾根に向けてトラバースしていくのがよさそうだ。先ずはMrTがトップで30mロープで尾根を下る。直ぐそばの立ち木まで10mロープでトラバースし、もう一度、30mロープを使って急斜面をトラバース。落ちても命を落とすようなところではないが、ロープ無しで下るのは少し怖い。懸垂下降の練習に丁度良い場所だ。8人にメインロープ一本というのは、少なすぎた。30mが2本あれば、大分時間を短縮できただろう。緩斜面を慎重にトラバースしてたあと、もう一度、30mロープの懸垂下降をして、主尾根に戻る。そこからしばらく下ると林道に下りた。
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力自慢はゴボウで降りる
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さすがSL
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写真を撮ると緩斜面に見えるけれど
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林道まで、水平距離100m、標高差60m
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15:22 前回、荒海山から登山道を降りたルートに合流。分水嶺からは1kmほど迂回してしまったが、一応、ルートとしては繋がった。分水嶺を離脱してからの核心部を無事に降りられたことに、胸を撫で下ろしながら林道を歩く。
15:55−16:03 八総鉱山の鉱毒処理場の前で休憩。迎えを呼ぼうと思ったが携帯が通じない。お風呂に入ってから帰ろうと、先を急ぐ。
16:35 荒海健康キャンプ場の前でYbTの携帯が通じる。夢の湯に電話をすると直ぐに迎えに来てくれるという。元気を出してしばらく歩くとマイクロバスが迎えに来てくれた。夢の湯に入るのは3回目。入浴後、囲炉裏のある広間で御主人と話しをしながら蕎麦を食べる。今回も、大根のキリヅケをサービスしてもらう。これは鉈で大根を切って味を浸みやすくしてつけたもの。おいしいおいしいといったら山盛りに出してくれた。これは、季節のものだから、いつもあると思ってもらったら困るよ、と、あと一ヶ月もすると沢庵が漬け上がるのだそうだ。これを目当てに泊まりに来る人もいるそうだ。
前回と同じく、18:37 会津高原尾瀬口発の電車に乗る。一応、分水嶺のルートを繋げることはできた。しばらくは、この駅で降りることはないだろう。でも、荒海山の東壁。いつかは登ってみたい。