2010年11月20日〜22日
分水嶺14 小川山〜飯盛山
晴れのち雨の特急山行


ichiran ichiran  map

 三国山を起点に始めた分水嶺、厳しいコースが多い東進コースは順調に進んでいるが、西進コースは後回しになっていた。 一般道が整備されているところが多く、いつでもできるだろうという気持ちがあるためなのだが、一部、登山道がなく気がかりな部分もある。 今回は、勤労感謝の日を含めた3泊4日の日程で、大日岩からから入り、小川山と信州峠の間の藪を突破して、野辺山までを繋げるロングコースを企画した。
 チーフリーダのTb、サブリーダのMrに、パーフェクトを続けているKs、2回のブランクから復帰した突撃隊長のHr、 燃え尽き症候群から完全復活したYm、それに、日本横断パート2のエースJbが初参加して、6名のパーティを組んだ。



11月20日 土曜日 晴れ

 6:35 八王子発の中央線に乗り、浦松佐美太郎の「たった一人の山」を読む。 華麗ではあるが古風な文章に眠気を催した頃、携帯が鳴る。Hrからだ。「今どこ?」との問いに「甲府の手前」と答える。 「あぁ、普通に乗ったの!」と返答があり電話を切る。僕は、すっかり9:20韮崎集合と思いこんでいたのだが、7:50八王子集合だったのだ。 出だしから、皆に大迷惑をかけてしまった。
韮崎駅紅葉 瑞垣山
韮崎駅前の紅葉 1722m地点より樹林越に瑞牆山を望む

 9:13 あずさ3号が到着して全員が揃い、ジャンボタクシーで瑞牆山荘に向かう。
 10:30 瑞牆山荘を出発。澄みとおった青空に、乾いた空気。今日は行程も短いので、のんびりとハイキング気分で登っていく。 テント入門で来たときには紅葉がきれいだったが、ひと月を経てすっかり葉が落ちている。
 11:19−24 富士見平小屋に到着。前回ほどの賑やかさはないが、小型のテントがいくつか張られていた。小屋の様子を覗いてから大日小屋に向かう。 飯森山に向かってしばらくは稜線上を登るが、徐々に南斜面のトラバースとなる。 南側の小ピークとの鞍部が鷹見岩への分岐点である。三角点フリークのHrのリクエストで、鷹見岩に寄り道をすることにする。 石楠花の藪の中をしっかりした道が通っている。目線の辺りは葉芽ばかりだったが、高い場所には花芽が付いている。 6月に来れば見事だろう。
 12:21−39 最後にちょいと岩を攀じ登ると一気に展望が開ける。鷹見岩の命名が納得できる眺めだ。 南アルプス、中央アルプス、御岳は雪化粧している。八ヶ岳には雪はないようだ。五丈岩から下ってきた分水嶺の尾根は、 大日岩を通って北に向かう。大日岩周辺は、分水嶺上を忠実に歩くのは難しい岩稜帯である。
富士山 瑞垣山
鷹見岩より富士山 金峰山から大日岩への稜線

 12:47 鷹見岩の分岐にもどり、デポしておいたザックを担ぐ。
 13:00 緩やかに下っていくと直ぐに大日小屋に着く。この小屋は窓が小さいので、中は薄暗い。テントにするか小屋に泊まるか迷ったが、 すき焼きパーティには、小屋の方がよかろう、という判断になる。


大日小屋

 13:06 荷物を下ろして、大日岩に向かう。2002年の昭文社の地図には、大日岩のすぐ東側を巻いて小川山に向かう道が載っている。 ガーミンの最新の地図には、この道に加えて、西側を大きく巻く道が載っている。そして、2010年の昭文社の地図からは、 東側の巻き道が消えて、西側の巻き道だけが載っている。どのルートを歩くか、計画段階でリーダが随分悩んだのだが、 インターネットの情報では、東側の道は、相当崩壊が進んでいて重荷を担いでの通過は困難とのことだ。 今回は、安全を重視して西側のルートを行くことにした。 そこで、今日の内に分水嶺の通る大日岩を踏んでおこうという企みだ。大日岩の南側を登り口を探しながら巻いていくが、 登れそうなところが見つからない。東側まで巻いていくと、金峰山と小川山の分岐の標識が見つかる。ここから大日岩に登る踏み跡が 伸びているようだ。20mほど登ったが、最後の5mを登るルートが見当たらない。
金峰山 大日岩と八ヶ岳
大日岩にて金峰山をバックに 大日岩と八ヶ岳、あと5mなのだが、、

 13:38−47 今回は、ここで良しとして眺望を楽しむ。分岐まで下りて、東側を巻く道を確認する。 標識には手書きで通行不可と書かれている。北に向かう道は不明瞭になっており、もう通る人はいないようだ。 やはり、明日は西を巻くルートを歩くことにしよう。
 14:21−50 北に向かう分岐に注意しながら戻ったが、大日小屋に着くまでの間には、分岐は発見できなかった。 それならば、ここのテン場から道があるのだろうと、あちこちと歩いてみるが、どうにもルートが道からない。 この辺り、実際の道は、昭文社の地図にある登山道よりもかなり南寄を通っており、GPS上の分岐点も 当てにならない。大分探し回った後、Hrから「道がある」との声が上がる。テン場の西側から北に20mほど入ったところだ。 確かにそこに行くとピンクのテープが連打されている。テン場からの入り口は付近は、なぜか意図的にテープが外されている ようだ。明朝のために進入路にテープを付ける。
 安心して小屋に入り、先ずは、小屋の毛布の上でKs式入念ストレッチ。そして、いよいよ宴会の準備。分水嶺の夕食は、 おいしさと軽さとの両立を図った「工夫のメニュー」が多いのだが、今日は重さを度外視した豪華メニューだ。 お肉に、卵、野菜もたっぷりのすき焼き、ダシも特別に調合してペットボトルに入れてきている。 今日は、分水嶺初参加のJbの歓迎会を兼ねているとあって、リーダ兼食担のTbも、ずいぶん気合が入っているようだ。 蛍烏賊をあぶって、熱燗をすする。お肉のいい匂いがしてくると箸が止まらない。御飯が炊ける前に メインディッシュがなくなりそうになったので、半分ほど食べたところで、蓋をして一時休戦。 御飯が炊き上がって、ウィスキーを飲んで、、、どうも、最近、初日は飲みすぎる。 記憶が不確かになったところで就寝タイム。だいぶ冷えてきたので、小屋の中にテントを張る。 今回は、冬シュラフできたので、ぬくぬくと眠りに着く。


11月21日 日曜日 晴れ

 4:30に起床。昨日のすき焼きの僅かの残りに、うどんを入れて、うどん出汁で味を調える。しっかりと昨日のおいしさが残っていた。 小屋に同宿していた単独者は先に出かけて言った。すき焼きの匂いは迷惑だったかもしれない。テン場に上がってストレッチをする。 幕営をしたのは3パーティのようだ。
 6:13 昨日のマーキングを辿って出発。分かりにくいのは入り口だけで、後は明瞭な踏み跡が続いている。地図に載ったのは最近だが、 かなり昔から歩かれているような道だ。しばらく順調にテープを追って行ったが、ルートが北から東に方向を変える辺りで前方のテープを見失う。 どうも、下の方にテープが続いている道が見えたので、そちらに行ってみたが方向がおかしい、 登り返して、もとの位置から前方を探すと道が続いていた。
 6:49−7:00 八丁平に着く。しばらく休んでいると、単独の若者が現れた。富士見小屋から来たという。 先ほど迷い込んだ道が、瑞牆山からの登山道だったようである。 ここからは、しばらく急登である。日が差してくると汗ばむぐらいの陽気。
 8:22−34 2315mの肩で岩に登ると展望が開ける。 もう、瑞牆山よりもだいぶ標高を稼いだ。
北岳 小川山山頂
瑞垣山越しに北岳を望む 小川山山頂

 9:03−15 小川山頂上に到着。ここから昭文社の地図ではルートがなくなる。頂上から西に向かう尾根に対して、 北側からは明瞭な踏み跡があり、南側には古いテープが付けられている。北側の踏み跡から尾根を下っていく。 しばらく尾根に沿って下りるが、踏み跡は、だんだん北側の斜面に下っていってしまう。 ちょっとタフな藪漕ぎをして尾根に戻ると、明瞭な踏み跡があった。南側にあった古いテープから入るのが正解だったの かも知れない。その後も、ときどき見失うものの、ほぼ明瞭な踏み跡が続いている。
 10:28−36 2171mの肩で休憩。展望があるかと思っていたのだが、樹林の中だった。
松ネッコ 松ネッコからの下り
松ネッコにて休憩 痩せた尾根道を下る

 11:27−40 松ネッコにて休憩。思いの外ヤブが薄く、快調なペースだ。松ネッコからの急な下り坂を慎重に下ると、 右手に派手な建物が見えてきた。三鷹市川上郷自然の村だ。あそこまで下れば、ビールが飲めるぞ、などと軽口をたたきながら 歩く。
 13:31−40 気持ちの良い林を下っていくと幕営予定地の萱ダワに着く。テントを張ってくださいといっているような平坦地がある。 皆さん、ここで泊まろうよ、というような顔をしていたが、僕はもうちょっと行こうよ、と駄々をこねる。 結局、もう少し先に進むことで合意が取れる。見通しの良い林の中を枯葉をけりながら気持ちよく歩く。
 14:30 1530m鞍部に着く。ここで幕営することとする。女性陣にテント設営をお願いして、男性陣は水汲みに出かける。 地形図を見ての検討では、山梨側に300m程下れば水を得られると踏んで、ザックに水容器を入れて降り始めたが、 50mも歩かないうちに、ぬかるみを見つける。良く見ると山肌から水が沸いているようだ。Hrが手袋をしているのも忘れて、 夢中で掘ると、澄んだ水がちょろちょろと流れ出した。早速、水汲みを始めることにする。しかし、湧き水をコップで受けると、 どうしてもゴミが入ってしまう。そこで、ダム工事を行なうことにした。Hrのプロの技で小さなダムが完成、泥が沈むのを 待つと綺麗な水汲み場が出来た。水汲みはJbの役目。リレーで容器を渡しながら30分ほどで20リットルほどの水を確保した。 上を見上げるとテントも張り終わったようだ。Hrのテントに荷物を置いて、Tbのテントで夕食の準備をする。 ワインで乾杯、チーズにナッツ、それにTb特製のしそ巻きと、いろいろなつまみを食べながら、ブランデー、ウィスキーと お酒が空いていく。メインディシュは、うなぎのひつまぶし。
3人ずつに分かれて寝る。今日は、冷え込みは厳しくないようだ。満月に照らされた枝の影がテントに映る。
取水ダム テント
取水用超小型ダム 手前宴会会場、奥控え室


11月22日 月曜日 雨

 4:30に起床の予定だったが、気がついたら4:50だった。慌てて起きて朝食の準備。分水嶺では定番となったYmの ヒットメニュー、チーズ入りミネストローネおじや。携帯で天気をチェックすると、午後から雨のようだ。 さて、今日はどこまで行こうか。
 6:16 リーダの言葉は、「今日は行けるところまで行きます」。少なくともビールの自販機があるとこまでは行こう、 という意気込みで出発する。気持のよい林のなかの笹原を登っていく。雲はそれほど厚くないが、 崩れることは間違いなさそうだ。1605mのピークに登ると八ヶ岳が見えた。朝日に照らされて、 刻々と色を変えていく。山梨側ではフェンスで囲いの中でミズナラの植樹が行われていた。
朝やけ 八ヶ岳
昨日歩いてきた尾根の上に朝焼けが広がる モルゲンロートの八ヶ岳

 1630mのピークから北に延びる尾根は両側が切り立った岩稜になっている。 少し北側の鞍部で稜線に立った後、Ksがルートを切り開いて西に向かう尾根に 回り込む。
 7:36−46 信州峠で車道を横切る。停まっていた車からご夫婦が降りてきた。横尾山ピストンとのこと。 しばらくは黙々と急登をこなす。
信州峠 横尾山
信州峠で車道を渡るとお地蔵さんがあった。落ちてしまった頭部の代わりに誰かが小石を乗っけている 横尾山

 8:37−43 肩に出ると横尾山まで50分の標識。そんなかかるわけないだろうと思いながら30mほど歩くと、 横尾山まで30分の標識。どうもここで、20分休みなさい、という指示のようだ。
 9:14−22 横尾山。先に着いていたご夫妻に写真を撮ってもらう。
 9:26−33 ポツリポツリと雨粒が落ちてきたので合羽着る。 以前、使っていたGPSの時には、地図、コンパスと併用していたが、 今度のGPSは詳細が地形図が内蔵されており、これだけで簡単にルートの判断ができる。 あまりの便利さに地図読みの技量が退化してしまいそうだ。雨が降ってきたのを契機に、 肩ベルトにつけていたGPSをポリ袋に入れて雨蓋にしまい込む。 ここから先は、地図とコンパスだけでルート判断をしてみよう。 ときどき岩場が出てくる細い尾根を歩いていく。少し登ると豆腐岩。四角い巨石だをぐるりと回って南西にルートを取る。
 10:15−18 急な登りだな、と思っていたら先頭のHrが、間違えた、と声を上げる。分水嶺の尾根を外れて、 木賊ノ頭に登る尾根に入ってしまったようだ。尾根としてはこっちが主稜。7年前に僕が単独で歩いたときも、 同じところで間違えている。直ぐに気がつくのは、さすがに藪屋だ。
 10:28−36 この辺りは、踏み跡がありすぎてルートファインディングが難しい。木賊ノ大ダル手前では、 正面の小尾根を下ってしまい登り返す。
 10:39−44 木賊ノ大ダルで休憩。ここからは僕がトップに立つ。 GPSでは、分からなくなってから見ても直ぐに居場所が分かるが、地図とコンパスの場合には、 分からなくなる前に地図を見るのが基本だ。地形図を手に持って、コブを越える度、尾根の方向が変わるたびに、 地図上の位置と対応付けながら進む。
 11:30−39 三ツ沢ノ大ダルで一休止。ここを越えてしまうと、水の確保は難しい。 一応、ビバークできる程度の水は持ってきているので、今日中の下山を目指して給水せずに進む。 少し登ると1660mの肩。県境は、ここから南の小尾根を下っていくが、分水嶺は、そのまま南牧村を 横切って西に向かう。 しばらくすると左手に平沢牧場の柵が現れる。しばらくは、柵の外側を歩くが、 1656mのピークの手前で、正面に鹿柵が現れる。フェンスのゲートをくぐって牧場の外周道路に入る。
鹿柵ゲート 十文字峠
1565mピーク手前で柵をくぐり、牧場外周道路に出る 十文字峠でバラ線をくぐり、尾根筋の登山道に戻る

 12:32−44 南からの冷たい風を避けて、1580m付近の林の中で昼食。 予想していたよりもヤブが薄く、順調に行程が進んでいる。今日中の下山は確実。 お酒を仕込んで、どこかの公園で幕営とするか、などと飲むことばかり考えて歩く。 さらに下ると、バラ線の向こうに十文字峠の標識が見えた。 バラ線をくぐり、牧場の道路を左に見送って尾根を登る。段差の高い丸太の階段を最後の力を振り絞って 登る。道が平坦になったと思ったら、間もなく飯盛山の標識が現れた。 飯盛山のピークは、分水嶺の尾根を外れた南側にある。天気が良ければ、 八ヶ岳の眺望を楽しめるだろうが、この天気では登る必要性はない。 そのまま、野辺山へ向かう尾根を進むことにする。平沢山のピークを過ぎ、 広い登山道を下っていく。
 14:27−34 突然目の前に広い駐車場が現れた。清里アーリーバード ゴルフクラブである。駐車場で丁度やってきたアベックに写真を撮ってもらう。 分水嶺は、ゴルフ場の中に続いていく。ゴルフ場の外を迂回しなければいけないと 覚悟していたのだが、ゴルフ場の中に歩道が続いているようである。案内板を みると、ここが中央分水嶺であることも解説されている。歩道に入ると直ぐに、 目の前に獅子岩が現れる。安山岩が風化したもので、ごつごつした岩が 連なっているが、どこが獅子の姿のかは良くわからない。獅子岩から先も、 分水嶺の尾根からは外れているものの、整備された道が続いている。 国定公園内でのゴルフ場の開発に伴い、歩道の整備が条件付けられたのかもしれない。 新しい標識が設置され、時折横切る車道にも、登山道を示す白線が引かれている。
 15:23−28 車道に下りて、しばらく歩くと、鉄道最高地点に到着。 石碑の周りで公園の整備が行われていた。
駐車場 分水嶺の案内
ゴルフ場脇の駐車場にて 案内図には分水嶺の解説

 16:04 野辺山駅到着。どこかで、一泊して帰るという意見もあったが、 結局、予定より1日早く帰ることにする。歩ける範囲にはお風呂は無いということなので、 駅のトイレで着替えをする。駅前のお土産屋でビール、日本酒を仕入れる。 我々が駅に来たのを見て、ストーブを付け、ビールの冷蔵庫の電源を入れてくれたとのこと。 この季節、よほど客が少ないのだろう。ビールは室温、だったが、 手作りの漬物も頂いて、大変親切にしてもらった。
踏み切り 野辺山駅
野辺山の踏切 鉄道最高地点の碑 野辺山駅

 今年最後の分水嶺は、4日の予定を3日で抜けてしまうという、快調な山行で締めくくりとなった。 今年はがんばった、という実感はあるのだが、参加人数の減少傾向が気がかりである。 東進ルートは、厳しいルートが続き、D−D−x と脅しを掛けたのが原因でもあるが、 来年は、西進ルートで一般登山道のコースも計画をしている。まだまだ長い分水嶺、続けていくためには仲間が必要である。 毎回、初日の夕食は歓迎会となるよう、分水嶺の楽しさを宣伝しよう。 次回からは、Jbは新鮮野菜を携えて接待役だ。


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