2010年10月26日

中央分水嶺踏破シリーズ10−2

清水峠〜三国峠 一人ぼっちの分水嶺

みろく山の会

 

 分水嶺10では、三国山から清水峠までを歩いたが、僕は急遽身内の不幸があって、ドタキャン。連続参加記録が途絶えてしまった。隊長がパーフェクトでないのはいただけない。早いうちに繋いでおこうと考えていた。予定していた用事がキャンセルになり、土日の予定が空いたので急遽計画を立てた。

 


 この秋は、余りにも頻繁に山に行っているので、懐具合がさびしい。とても、一人でタクシー代を払うゆとりはない。そこで、Car&Bikeの計画を立てた。アプローチに自転車を使う場合には、どちらを登山口に選ぶかが重要な問題になる。今回、三国峠の標高は、1070m、清水は630m。途中の最低地点は、190mである。三国峠からの延々と続く坂道を自転車で登ることは考えられない。清水までの上りは、標高差440m。僕の通勤での登坂高さの5日分。まあ、登れない標高差ではないだろうと、楽観的に考える。 昭文社の地図での所要時間は19時間45分。2日で抜けるためには、前夜発が必須になる。

 

10月15日 金曜日 晴れ

22:00に家を出る。16号線の通勤ラッシュが終わる時分を見計らったつもりだったが、これが、大誤算。町田立体交差の夜間工事で片側交互通行。ここを抜けるだけで、1時間を要した。

 

10月16日 金曜日 晴れ

三国峠に着いたのは午前2時過ぎ。アラームを3:15にセットして仮眠を取る。実質寝れたのは15分ぐらい。これで、一日歩くのは辛そうだが仕方がない。

3:30 気温は6度。合羽を着て出発。長い三国峠を抜けると長い下り坂が始まる。ブレーキの効きを確かめながら、時速40kmを超えないように慎重に下っていくとすぐに苗場スキー場。ここから、40mの登り。時速15kmをキープして順調にクリア、火打峠を越えると再び下り。満月に照らされて先の状況も確認できる。二居峠を越えた直線の下りでは、時速50kmを悠に超える。

4:44−59 右折ポイントとしてマークしていた関のローソンに寄る。肉まんを食べようと思っていたのだが、ホットのショーケースの中には、何も入っていない。この時間の田舎のコンビにでは、暖かいものを在庫しておくだけの需要がないようだ。仕方なく、暖かい缶コーヒーを飲む。田んぼの中の県道28号線は、ほぼ水平。気持ち良く走る。

5:18 国道291号との交差点で右折。標高190m。いよいよ登りだ。最初は緩やかな登り、15kmをキープして登っていく。10分も走ると汗が噴出してくる。合羽を脱ぎ、野菜ジュースで水分補給。標高270m。道路の中央の融雪用の散水ノズルがなくなると、傾斜がきつくなってくる。なんとか時速10kmをキープするが、心拍数は160に達した。標高410m。目の前に現れた、長い直線の登りに溜まらずギブアップ。



5:50−53 道端に座り込んで呼吸を整える。前回タクシーで登ったときには、それほど傾斜がきついとは思わなかったが、6%の登りは甘くはない。10分おきに休憩を取りながら登っていく。ようやく巻機山への分岐を過ぎて、道が細くなる。

6:20 クランクになった急坂をギアを最低に落として乗り切ると、ようやくゲートが見えた。



直ぐに歩けるような状態ではない。ペダルに付けているクリップのベルトで登山靴を締め付けていたので、足が痺れている。靴を脱いで足をマッサージする。

6:37 菓子パンの朝食を食べ、そろそろ出かけようかと思っていたら。軽トラックがやってきて、ゲートを開けた。挨拶をすると、「乗っていきますか」と声をかけてくれた。まさに神様の救いの手。ありがたく乗せていただく。

6:49 登山道との分岐で下ろしてもらう。お兄さんは、そのまま工事用の林道を走っていった。御蔭さまで一時間ほど得をした。いよいよ登りに取り掛かる。

7:26−31 一人で歩くのは久しぶり。なかなか歩くペースがつかめない。尾根に乗ったところで早々と休憩。シャツを脱いでTシャツ一枚になり、日焼け止めを塗る。分水嶺で日焼け止めが役に立つもの久しぶりだ。少しずつペースを整えながら登っていく。紅葉が見事だ。



8:54−9:02 清水峠手前の水場。前回はたっぷりと流れてい水がない。2mほど登ったところに、かすかな流れを発見。誰かが笹の葉をうまくつかって樋を作ってくれている。5分ほどかけて、2リットルのプラティパスと、半分ほど飲んだ野菜ジュースのペットボトルに水を汲む。



9:10−35 清水峠でゆっくりとする。尾根は風が吹いていて寒い。シャツを着込む。七ツ小屋山に向けて笹原を登る。

10:18-22 大源太山への分岐で一本立てていると、後ろから単独行の青年が歩いてきた。写真を一枚撮ると、通りすぎていった。かなりのスピードだ。

11:02−11 蓬ヒュッテで一服してパンを食べる。また、後ろから単独行者がきた。話を伺うと今朝、白毛門から登ってきたと。早いですね、というと、自分より先に3人ほど歩いているとのこと。皆さん、馬蹄形コースを日帰りで歩こうとしているとのこと。きっと、さっきの青年のことだ。



11:56−12:04 武能岳の頂上で、汗で流れた日焼け止めを塗りなおして、ゆっくりしていたら、また、後ろから単独者が登ってきた。ぜーぜーはーはーいっているのに、一枚写真を撮っただけで、先に歩いて行った。それにしても、コースタイム16時間を越えるルートを、日帰りで歩くとは御苦労様なことだ。



13:42−14:20 茂倉岳の頂上で、コーヒーを飲みながらゆっくりと山座同定をする。ガスもすっかりあがり、見渡すばかりの展望。今日歩いたところ、そして、巻機山から丹後山、そして、平ヶ岳につながる稜線を追っていく。



そして、一ノ倉岳から谷川岳。



そして、万太郎に千ノ倉、右には苗場、左に見えるのは浅間山だ。



南側からはガスが滝のように流れてくる。幻想的な風景だ。



遠くには、富士山も見えている。肩の小屋の馬場さんの話によると、夕方のこの時間に富士山が見えたのは、半年、山に入っていて、今日が2回目とのこと。今日は、今シーズン最高の眺望のようだ。



16:16−16:12 トマの耳。少し歩いては、景色に感動し、ゆっくりゆっきりと歩く。

16:20 肩の小屋に到着。素泊まり¥2,000は申し訳ないような値段だ。管理人の馬場さんに、7月に仲間がお世話になったことのお礼を言う。今日は、40名の宿泊で超満員だけど、7月はもっと混んでいたと。僕は、休憩室に入ったところのテーブルの周りに場所を割り当てられた。要するに宴会場。飲んで酔っ払ったらその場で寝れる。僕にとっては、正に特等席だ。すでに、宴会は始まっていた。僕も、先ずは、ビールを飲んだあと、持ってきたワインを飲む。仲間と飲むのも楽しいけれど、初対面の人と話をするのも新鮮だ。今日の行程中に会った人は、つわものばかりだったけれど、ここに泊まる人は、普通に山を楽しんでいる人達。酒が回ってくると、ついつい分水嶺の話を始めてしまう。8時頃には、切り上げてテーブルの周りの長椅子にシュラフを広げる。小淵沢ステーションホテルよりも、ずっと、広くて快適だ。

 

10月17日 日曜日 晴れ−雨

4:00起床。Sugakiya ラーメンにたっぷりの焼き豚を入れて食べる。

4:55 暗い中をヘッドライト付けて出発。急なくだりだが良く整備されていて不安はない。20分ほど下るとオジカ沢ノ頭への登りになる。どうにも喉が渇いて仕方がない。頻繁にザックを下ろして水を飲む。足も重い。昨日の自転車の登りで筋肉を酷使しすぎたようだ。後ろを振り向くと、武尊山あたりの空が紅色に染まっている。痩せた尾根を慎重に登っていく。



6:00−02 オジカ沢ノ頭。すっかりと明るくなりヘッドライトをしまう。避難小屋を覗く。3名で満員か?

6:23−25 小障子ノ頭。歩き始めてから、アミノバイタルを1リットル、真水を500cc飲んだ。

6:35−39 大障子避難小屋。ここは、比較的広い。



大障子ノ頭への登り。ようやく体内の水分不足が解消してきたようだ。壊れていた足の筋肉細胞が再生するのを感じる。急斜面を登り、吾策新道を右に分けて尾根を少し歩いたところが万太郎の頂上。



7:41−52 ここで、昨日の復習の山座同定をする。途中で追い抜いてきた人と話をする。昨夜は大障子避難小屋泊まりだったとのこと。小屋の中は7名で満員で、2人が外にテントを張って寝たとのこと。やはり、昨日は肩ノ小屋に泊まって正解だった。笹原の歩きやすい道を、小股ハイピッチで下っていく。鞍部からエビス大黒ノ頭までは長い登りだが休憩を取らずに登っていく。

9:26−9:44 エビス大黒ノ頭でゆっくりと休む。パンを食べて、ペットボトルにポカリスエットを作る。笹に覆われた、仙ノ倉の北尾根がやさしい表情をしている。



10:37−53 仙ノ倉山の頂上はにぎやかだ。北の尾根に向かって黙祷。ここまで来ると、平標山は直ぐ近くに見える。正面には大源太山、その奥が三国峠だ。ずいぶん予定よりも早くこれた。



11:36−49 整備された木道、階段を辿っていくと、平標山。こちらは更ににぎやかだ。遠慮して隅の方に座ってコーヒーを飲む。若者のグループの多い。山スカのお嬢さんも、と思ったらおばさんだった。平標山の家までは、木の階段が延々と続く。間隔も一定していて歩きやすい。



12:15−18 平標山の家。冷たい湧き水で喉を潤す。ここから先は、紅葉した林の中の散策路といった道だ。途中で、ひげのおじさんに出合う。挨拶をすると、どこまで?と聞くので、三国峠だというと、雨は降らないと思うけど、気お付けなさい、といってくれる。手に持っているのは、きのこの入った袋だけ。山の家の管理人さんだったのだろうか?



12:08 三国山への道を右に分けて、大源太山へ道に入る。ひと登りしたところで、GPSで現在地を確認する。分水嶺は、大源太山の頂上は通らずに、途中で西南西方向にのびる尾根を下っていく。この様なときには地形図が内蔵されたGPSは強力なツール。分水嶺の尾根は確認できたが、深い笹に覆われていて、一人で突破できるような状況ではなかった。仕方なく、頂上に向かう。

13:15−27 大源太山の頂上で、ドライフーズの豚汁にお湯を注いでいたら、したから賑やかな声が聞こえてきた。来るは来るは、たちまち頂上は占領されてしまった、頂上で「XX区ハイキング倶楽部 2249回登頂記念」なる垂れ幕を広げて、記念撮影。25名、御一行様だ。巻き込まれたら大変と、先に下りようと思ったら、ストップが掛かる、花摘み中と、しばし待たされてから下りる。再び分岐まで戻り、トラバースする。

13:43 GPSで現在地を確認。ここで、再び、分水嶺の尾根に乗った。上を見上げるが、やはり道はない。



後からの賑やかな声に追われるように三国山を目指す。



14:49 右、三国峠近道の表示。左に進路を取り、今回最後の登り。さすがに疲れが出てきてペースが上がらないが、何とか登り切ると、右に三国峠へ降りる道を分ける。分水嶺は三国山とおらずに、登山道のとおりに三国峠に下りていく。しかし、折角来たので頂上に向かう。

15:00−10 頂上で残っていたパンを食べる。今日も、前半大分稼いだけれど、後半はペースが落ちて、結局はほぼ予定通りの時間になった。まあ、ほっとしてというのもあるけど、一日の行動時間は、10時間ぐらいにしておくのが無難だ。三国峠までは、木の階段が延々と続く。随分とお金を掛けて作られたもののようだが、左右に傾いているものが多く、意外と怖い。冬の方が楽に下りれそうだ。下っていると、ぽつぽつと雨が降ってきた。平標でのおじさんのアドバイスは正しかった。

15:46−50 三国峠。これで分水嶺が繋がった。公式な会山行ではないが、分水嶺10−2と名前をつけて、パーフェクト復帰とさせてもらおう。車の待つトンネル口に向けて下る。雨がぱらぱらと降るが、葉を落とす前の広葉樹に守られて、ほとんど濡れずに歩ける。

16:19 車の元に戻る。電光表示板に示された気温は3℃。小雨に濡れながら、しっかりとストレッチをする。自転車の回収に向かう。途中、湯沢のスーパでお土産として、魚沼産コシヒカリ新米、を買う。

18:22 清水。自転車は雨の中、健気に待っていた。前輪を外して、車に詰め込む。エンジンブレーキのみで延々10kmを下る。


 

 繋げて歩くことにこだわっていると、それが途切れたとき、どうにも落ち着かない。少なからず強硬な計画であったが、何とかこなし、接続することが出来た。これで、落ち着いて次の計画を立てることが出来る。

 今回、久しぶりの単独行だった。紅葉、展望に恵まれた絶好の登山日和、感動したところでは立ち止まり景色に見とれ、疲れれば休み、調子がいいときにはハイペースで歩く。気ままな旅を楽しんだ。もうひとつの単独行の楽しみは、他の単独行者とコミュニケーションが取れることである。パーティ同士だと、挨拶ぐらいしかしないことが多いが、単独同士だと意外と話をするものである。山の楽しみ方を再発見することもある。

 さて、来週は分水嶺シリーズ13回。未踏のルート開拓では、やはり仲間の力が必要である。

10月23日 走行距離 52.3km 走行時間  2:50 累積登攀高  744m 平均速度 18.4 km/h

10月23日 歩行距離 15.2km 行動時間  9:38 累積登攀高 2,385m平均速度 1.6 km/h

10月24日 歩行距離 20.5km 行動時間 11:25 累積登攀高 1,980m 平均速度 1.8 km/h



 

自転車の行程

 

10月23日の歩行行程

 

10月23日の歩行行程